日本では公共放送局がこのようなヘイトを行うのか。
「1945ひろしまタイムライン」は、「日本が戦争をしていた1945年にSNSがあったらどんなことをつぶやいていたのだろう」というテーマで、当時広島にいた3人の市民の日記を「手がかりに」、現在広島で暮らすメンバーが「当時の生活をじっくり想像」しツイッターで日記のような形で発信するというプロジェクトだ。ホームページは https://www.nhk.or.jp/hiroshima/hibaku75/timeline/
ツイッターのアカウントは
シュン@ひろしまタイムライン (中学1年生の新井俊一郎さん)
やすこ@ひろしまタイムライン(主婦の今井泰子さん)
一郎@ひろしまタイムライン(新聞記者の大佐古一郎さん)
今回問題視されているのは「シュン」のツイートの中で、朝鮮半島にルーツのある人たちへの差別を再現あるいは扇動するような内容のものである。最初にハフポストの報道でこれを知り、実際のツイートを読んだときは、現代の日本で、仮に「当時の再現」といった設定で発信されたにせよこのようなヘイトともいえる内容が平気で発信されてしまっていることに衝撃と恐怖を感じた。それもネトウヨとかではなくNHKという日本を代表する公共放送局がである。内容はひど過ぎて、ここに直接その表現を引用することは私はできない。リンクを張ることさえはばかられるが、何を問題視しているか示さなければいけないのでリンクだけは張る。
私が把握している限りは問題のツイートは、6月16日のこの3つ
と、8月20日のこの3つだ。
私はカナダに四半世紀住んでいることもあり、すぐ、これが「カナダで起ったら」と想像して、SNSでこう発信した。
<ジャ○プだ!! 敵性外国人となったジャ○プの群衆が、列車に乗り込んでくる!>といった発言は当時の北米にあってもおかしくないですね。当時の再現としてカナダの公共放送局CBCがこんなツイートしたら恐ろしくて外に出られなくなりそう。
アジア太平洋戦争時、米国やカナダでは日系人は「敵性外国人」とされ、財産を奪われ、強制収容所に送られた。NHKに相当する公共放送のCBCが現在、このような歴史を記憶するプロジェクトをはじめて、このような発信をするなど到底考えられないし、万が一あったら、ヘイトであると、瞬時に全国の世論が炎上し、政府や国会も黙っていないだろうし、国際的な批判も浴びCBCは謝罪と撤回を余儀なくされるであろう。これはやはり差別・迫害された歴史をもつ(現在も続いている)先住民、ユダヤ人やムスリムの人たち、ブラックの人たちなどについても同様である。もちろん、苦い歴史の記述という文脈で、このような差別があったのだ、という解説番組はあり得るし、そういう場合は、歴史から学び二度と起こさないという意味では大事であろう。しかしそういった差別発言をそのまま生の形で、実在する人が今言っているかの如くSNSで発信してしまうというのはこれは差別行動にほかならず許されるものではない。今回のツイートで脅威にさらされるのはむろん在日朝鮮・韓国人の方たちである。1923年9月1日の関東大震災後に、朝鮮半島出身者についての根も葉もない流言飛語が流され、何千もの人たちが虐殺された事件を思い出すであろう。おまけに、現在の日本は政府・メディアを筆頭とし、植民地支配の歴史を反省し植民地主義を乗り越える努力をするどころか、歴史を学ばず否定さえ行い、朝鮮半島をルーツに持つ人たちへの偏見や差別は悪化している風潮さえある。そのような社会の中でのこの一連のツイートは、公共放送ともあろうものが社会にはびこる差別心にお墨付きを与え、ますます増長させるきっかけになりかねない。そういう意味でこの一連のツイートは「ヘイトスピーチ」であると私は断言する。
だからNHK広島局がこれだけの批判を浴びても謝罪・撤回しないのはただただ信じられないという思いで見ている。私はSNSでこうも呼び掛けた。
NHKに抗議のメールしました。「平和都市広島」の心ある人たち、また「ノーモアヒロシマナガサキ」運動をやっている人たち、「被爆地」の放送局がこういうヘイトをやることに対しいまこそ立ち上がり毅然と声を上げるときではないですか。
NHK広島局への連絡方法はここにある。私も引き続き、メール、電話をしようと思っている。現地で抗議・スタンディングをしている人たちもいるようだ。敬意を表する。
一連のツイートの、朝鮮半島にルーツを持つ人々に関連する内容は、サイトで公表されている新井さんの日記の原文には出てこない。NHKは「手記とご本人がインタビューで使用していた実際の表現にならって掲載しました」と言っている。しかし実際に当時の13歳の少年が見たことの記述としては不自然な表現もある。過去の漫画作品の中にそっくりの場面が出てきているという声もある。当時の日記を「手がかり」に、「当時の生活をじっくり想像」しているというが、NHKはここまでの具体的な内容のソースを明らかにすべきである。
NHKは、さる6月「これでわかった!世界のいま」という番組で Black Lives Matter 運動を解説する中でブラックの人々への偏見に満ちたアニメーションを流しツイッターでも発信したということで批判が噴出、謝罪と撤回を行った。今回は対照的に、居直りとも取れる声明を出している。「これでわかった!」のときは米国大使館からの抗議があったことが影響したのかもしれないと思っていた。NHKに伝えたいが、公共放送として、ヘイトを助長し人を危険と恐怖にさらすようなツイートは即刻削除していただきたい。
また、被爆者の新井俊一郎さんには、ご自分の名前でこのようなヘイトツイートが発信されてしまっていることを容認しないでいただきたい。発言主とされている新井さんが削除を要請すればNHKは拒否はできないはずです。
2020年8月23日
乗松聡子 ピース・フィロソフィー・センター代表(カナダ・バンクーバー)
【以下、賛同し連名してくださった方々】
★賛同される方は下の例にならってお名前などの情報を peacephilosophycentre@gmail.com にメールを送ってください。「NHK広島の件」などと、わかるようなタイトルをつけてください。コメントも歓迎です。コメントをいただけた場合、この投稿のコメント欄に掲載の許可もいただいたとみなしますのでよろしくお願いします。
仲渡尚史 保育所所長 広島市
兼近修身 翻訳業 滋賀県高島市
姜英哲 会社員 東京都
加藤夕貴 専門職 カナダ
安西玲子 ピアノ教室講師 岐阜県
レイチェル・クラーク 通訳 米国ニューヨーク州
鄭剛憲 団体職員 神奈川県
黄 圭 IM Holdings Ltd代表 会社役員 バンクーバー
成澤宗男 ジャーナリスト 神奈川県
羽田ゆみ子 出版社 東京都
浜田守彦(ひこぱぱ) 無職 兵庫県
紺田亮 飲食店
久保田竜子 大学教員 バンクーバー
藤岡惇 教員 京都市
田中利幸 歴史家
山本英夫 沖縄県名護市
東本高志 Blog「みずき」主宰 大分市
ノーマ・フィールド シカゴ
長谷川澄 退職大学教員 モントリオール、カナダ
鬼原 悟 広島県福山市